『Avatar: Frontiers of Pandora™ (アバター:フロンティア・オブ・パンドラ)』は、2024/6/18からSteamで正式配信されている開発:Massive Entertainment、パブリッシング:ユービーアイソフトのPCゲームで、SF映画の人気作『アバター』の世界観で冒険と戦いを楽しめるアクションアドベンチャーゲーム。
映画にも引けを取らない重厚な3Dグラフィックによって再現されている惑星パンドラや登場キャラクターたち、人間よりも高い身体能力を持つ異星人ナヴィになって活動できるシステム、ソロプレイ以外にオンラインで最大2名のプレイヤーが一緒にゲームプレイを楽しめるCO-OPシステムの実装が特徴。
ジェームズ・キャメロン監督の大ヒットSF映画『アバター』シリーズファンの人、大手企業が惜しみない資金を投入して完成させたAAAクラスのアクションゲームで遊ぶことが好きな人、時間を合わせて一緒にフレンドとCO-OPで遊べるゲームを探している人、重量級のグラフィックで動くPCゲームを求めている人におすすめの新作。
- Steam版がリリース
- 圧倒的なグラフィック
- 2名のCO-OP可能
ついにSteamでも配信を開始
現在PCゲームのポータルサイト「Steam」で正式配信中の『Avatar: Frontiers of Pandora™ (アバター:フロンティア・オブ・パンドラ)』は、名作SF映画シリーズの世界観を持つヒット作をSteam経由でも遊べるように移植したおすすめの新作。ジェームズ・キャメロン監督が生み出した世界で遊べるファン必見のタイトルだ。
本作が初リリースされたのは2023年12月で、PC版以外に次世代機PS5、Xbox Series X|S向けにも発売された。日本でのPS5版売上は初週で8,363本という成績で、全プラットフォームの累計プレイヤー数は190万人以上、推定売上高は1億3,300万ドルという結果となっている(Insider Gaming調べ)。大ヒットを記録した作品だ。
『Avatar: Frontiers of Pandora™ (アバター:フロンティア・オブ・パンドラ)』は世界的にも評価の高い作品であり、レビューサイトでも軒並み高得点を記録。映画『アバター』をフィーチャーしたゲームは本作が初めてではないが、その圧倒的なグラフィックが多くのプレイヤーを魅了して現在にまで至っていることは間違いない。
そんな最新タイトルがついにSteamストアでも解禁され、本サイトでは2023年の初登場時に記事の作成を見送っていたことから、ここで取り上げる次第。最初に断っておくがSteamバージョンと他プラットフォーム向けに配信済の作品は完全に同一の内容であり、特別なコンテンツが搭載されているということはない。
記事執筆時点でSteamストアには48件のユーザーレビューが寄せられており、その総評は「やや好評」となっている。否定的な意見の中には、本作が『ファークライ』シリーズと全く同じ構成であると論じるものや、Steamとユービーアイソフトの微妙な関係性を皮肉ったものまで見受けられるが、これについては後ほど見ていこう。
プレイヤーは映画『アバター』でおなじみの惑星パンドラへ降り立った主人公のナヴィとして行動しながら、失われた「伝統との繋がり」を取り戻しつつ、ナヴィとしての真の存在意義を見いだして、他のナヴィ部族と協力しながら美しいパンドラを守り抜くための戦いへと身を投じていくことになる。オリジナルストーリーが展開するぞ。
ゲームはソロプレイ以外に、オンラインで最大2名のCO-OPにも対応しており、この協力プレイ要素は「ストーリーキャンペーン」モードの全てに対応。一緒にプレイする時間を合わせやすいPCゲーマーのフレンドがいる人にもおすすめできる新作で、壮大な光景が広がっていく惑星パンドラの美しさを体感しながら遊べる。
ただし詳細については後述するが、本作は最高峰のゲームグラフィックを実現している作品なので、PCへの要求スペックは高い。またインストールサイズも大きいため、ローエンドなゲーミングPCを持っている人には全くおすすめできない作品と言える。ある程度の馬力を持ったPCゲーマーに向けて製作されたタイトルだ。
原作SF映画『アバター』について
ゲームについての大まかな概要や世界観を説明する前に、ジェームズ・キャメロン監督が大ヒットさせた原作映画『アバター』シリーズについて触れておきたい。本作をプレイする人の90%以上はこの映画を見ているはずだが、稀にそうでない人もいる可能性も除外できないため、「おさらい」という形でざっとあらましを記載しておく。
SF映画『アバター』が公開されたのは2009年。2154年の未来世界が舞台となる本作では、主人公の地球人ジェイク・サリーが惑星パンドラの原住民「ナヴィ」に溶け込み、結果的に資源の略奪しか考えていなかった地球人側と戦争を起こすまでのストーリーを描く。同年にビデオゲーム『アバター THE GAME』も発売された。
公開と同時に世界的な大反響を巻き起こした映画『アバター』は、世界歴代興行収入ナンバーワンという名誉ある記録を樹立し、日本でも大ヒットを記録。最先端の3D技術によってCGモデルのナヴィたちが実写と融合している点が素晴らしく、SF映画で数々の名作を残してきたキャメロン監督の面目躍如となった。
タイトルにもなっている「アバター」は、地球人が人工的に生み出したナヴィの身体を指す言葉として用いられており、地球人は催眠カプセル状のマシンへ肉体を残し、精神をアバターと融合させることによって活動できるようになる。同時に2つの肉体に精神を宿すことができない、という設定が波乱のストーリーにも直結している。
3D上映されたこともある同作は、広大な大自然が「高低差」を持って描かれているという特徴を持っており、その後ブルーレイディスクとして発売された際にも3Dバージョンが出回った。SF映画、特に3DCGモデルを扱った分野の作品における「マイルストーン」的な存在感を持つ作品であり、視覚効果の魔法に酔いしれること請け合い。
日本の押井守監督は、当時自分が構想していた作品を抱えたままスタッフと『アバター』を鑑賞しに行ったが(キャメロン監督は押井監督の『攻殻機動隊』ファン)、その特殊効果の出来栄えに心を折られてしまったということを発言している。日本の技術力では到底追いつけない領域にまで達した作品としても有名な映画だ。
2009年の段階で本作はシリーズ化されていくことが公表されていたが、続編となる『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』が公開されたのは2022年。前作から実に13年ものスパンが空いてしまった格好になるが、これは全5作にまで膨らんでいったシリーズを一気に片付けるための下準備期間が長かったためと想像する。
ちなみに3作目は2025年に公開予定で、4作目と5作目はそれぞれ2029年、2031年の公開が発表されている。記事執筆時点では最終作まで7年ものスパンがあるという驚異的なスケジュールだが、製作リソースの事情なども鑑みると妥当な線と言えるかもしれない。キャメロン監督のライフワークになるのだろう。
ゲームの特徴
『Avatar: Frontiers of Pandora™ (アバター:フロンティア・オブ・パンドラ)』では、映画シリーズと異なる独自のストーリー要素が展開。プレイヤーは地球人の資源開発局「RDA」によって「兵士」として育てられた経緯を持つ主人公のナヴィとしてゲーム世界へ降り立ちながら、様々な冒険と戦いを経験していくことになる。
未開のままの美しい自然を人間が自分勝手な行動で破壊していくことを強く糾弾している映画『アバター』と同じく、本作では人間側であるRDAと、惑星固有の生命体であるナヴィたちの対立が描きだされる。本質的に「人間vsナヴィ」という構図は変わっていないため、映画のファンであれば没頭しながら遊べること請け合いだ。
拉致から15年が経過し、ようやく人間の手から開放されたとしても、そこで自分が「よそ者のナヴィ」であることを自覚した主人公は、失われた伝統との繋がりを取り戻し、ナヴィとしての「真の存在意義」を見い出しながら、様々なナヴィ部族たちと共闘してかけがえのない惑星パンドラを守り抜くことを決意する。ジェイクと重なる設定だ。
映画『アバター』シリーズでも観客たちを魅了した惑星パンドラの目を見張る美しさは、丹念なモデリングによって忠実に再現されており、オープンワールドになっている未知の大陸での冒険も大いに楽しめるはず。視覚的なインパクトが素晴らしい作品であり、ファーストパーソンビューでプレイを進めていくことに没頭できるだろう。
主人公キャラクターを自由にカスタマイズできる点も作品の特徴で、自分のプレイスタイルに合わせて新しい装備をクラフトしたり、スキルと武器をアップグレードしたりといった成長要素も体験できるため、遊び甲斐は満点。大いなる記憶を宿す「エイワ」と繋がるシーンも忠実に再現されており、感情移入しながらプレイできるはずだ。
初代作の映画『アバター』最大の見所でもあった「バンシー」もしっかりと登場。プレイヤーは自分だけのバンシーと絆を結びながら、圧巻のスケールで展開する「空中戦」を有利に進めたり、自由に空を飛び回って広大な西部辺境を横断したりといったダイナミックなアクションを堪能できる。映画ファンには見逃せない新作PCゲーム作品だ。
ある意味で人間とナヴィのハイブリッドな存在でもある主人公は、弓や投げ槍など精度の高いナヴィの伝統武器を使うほか、RDAによる訓練経験を活かしてアサルトライフルやショットガンなど破壊力のある武器を利用することも可能。これは元々人間だったジェイク・サリーとほぼ同じ設定なので、テンションも上がっていくだろう。
ハッキリ言うと『Avatar: Frontiers of Pandora™ (アバター:フロンティア・オブ・パンドラ)』はプレイヤーが映画を見ていることを前提に製作された作品なので、映画を未見の人にはあまりおすすめできないゲームになっている。面倒でも最初に映画『アバター』シリーズを鑑賞し、その後本作をプレイすれば面白さが倍増するはずだ。
映画のストーリーラインとはあまり交わるところがないが、登場するRDAの兵器やナヴィたちの生活スタイルなどには映像作品への配慮が十分に感じられ、オフィシャルゲームとしての高い地位を確立している。何より映画にも引けを取らない映像美を実現している点に本作最大の価値があり、ファン垂涎のゲームとなっているのだ。
ゲームの全体的なシステムや作風は、ユービーアイソフトの人気シリーズ『ファークライ』の要素があるため、同シリーズのファンにもおすすめできる新作といえるかもしれない。ただしその反面真新しいゲームシステムなどにはお目にかかれないので、ファークライシリーズを遊び倒していると「既視感」を覚えるかもしれない。
日本語インターフェースに対応
Steamでの販売価格は9,790円で、現在は「リリース記念セール価格」となる40%OFFの5,874円で購入できる(2024/7/12までの期間限定価格)。すでに出回っているゲーム作品のSteamバージョン配信という点に配慮してなのだろうが、かなりの値引き率になっているので、欲しい人は期間内に製品をゲットすることをおすすめする。
ちなみに本作は無印版以外に『Avatar: Frontiers of Pandora Deluxe Edition』『Avatar: Frontiers of Pandora Gold Edition』『Avatar: Frontiers of Pandora Ultimate Edition』に分かれる3バージョンが展開中。ゴールドとアルティメット・エディションには、最初から「シーズンパス」が同梱されている点が特徴だ。
5,610円でダウンロードコンテンツとして販売されている「シーズンパス」には、2種類のストーリーパックと追加クエスト、バンシーコスメティックセットなどが同梱されている。本編を遊び尽くした人を意識した内容のコンテンツで、無印版をプレイした後、ゲームの全てに触れてみたいと考えているユーザーにもおすすめだ。
この中で最も値段が高いのは『Avatar: Frontiers of Pandora Ultimate Edition』の18,150円で(リリース記念セール価格は40%OFFの10,890円)、これを購入すれば別売されているDLCを全て網羅できる上、単品での販売がない「デジタル・アートブック」も付いてくる。コアなファンの人はこのエディション一択になるだろう。
ゲームは標準で日本語インターフェースと字幕をサポート。なお、音声は英語・フランス語・ドイツ語・スペイン語・ポルトガル語(ブラジル)の5種類のみとなっており、声優による日本語吹き替え音声は存在していない。またプレイを行う場合には、Steamアカウントとは別にユービーアイソフトの無料アカウントも必須になる。
作品はマウスとキーボードを用いた操作方法以外に、XboxコントローラーとPlayStationコントローラーの2種類を部分的にサポート。サードパーティー製のコントローラーに関するデータは記載が存在しないので、これらを持っている人は「動かない可能性がある」点に注意。なお、各種のDLCはゲーム内から購入することも可能だ。
CEROレーティングは「D」相当となっており、17歳以上のプレイヤーが対象となる。解除できるSteam 実績は合計で31種類で、様々なゲーム作品でもれなく実績を解除してきた「実績ハンター」なプレイヤーにもおすすめできる新作PCゲームと言える。高精細な3DCGで再現された惑星パンドラを冒険しながら、実績の全解除を目指そう。
なお、Valveの携帯ゲーム機「Steam Deck」との互換性については記述が存在せず、この点はやや残念ではあるが、次項で言及する「PCのシステム要件」的に苦しい可能性がある。画質を落としてプレイすることはこの作品には「不向き」な遊び方であり、ハイスペックなゲーミングPCとモニター環境で輝く作品と言えるだろう。
システム要件
『Avatar: Frontiers of Pandora™ (アバター:フロンティア・オブ・パンドラ)』のシステム要件はやや高め。本作は最新鋭のグラフィックを堪能するために作られた側面を持つ作品のため、プレイヤーにも高いハードルが提示される。現行のミドルスペックもしくはミドルハイ、ハイエンドクラスのゲーミングPCを持っていることが必須だ。
グラフィックボードの推奨要件で提示されているパーツはAMDのRadeon 6700 XTもしくはNVIDIAのRTX 3060クラスで、要求されるVRAM搭載量はそれぞれ12GB、8GBとなっている。ちなみにこれらの推奨グラフィックボードのパーツ類は、アップスケール技術「FSR2」環境下で快適に動くことをテストした上で算出されている。
CPUの推奨モデルはAMDのRyzen 5 5600XもしくはIntelのi5-11600Kクラスとなっており、メインメモリ推奨搭載量は16GB。プロセッサーの面においてもある程度以上のパーツを要求されることになるゲームで、特に古いPCパーツでゲーミングPC構成を維持している人にとっては、動作環境面で不安を感じさせる作品だ。
インストールサイズは90GBと重量級。本作には追加のダウンロードコンテンツが存在しているため、これらも込みで遊ぶとなれば、100GB程度のストレージを専用に用意しておかないと危ない。普段沢山のゲームをストレージに保有している人は、しばらく遊ばないゲームを一度アンインストールして、容量をしっかり確保しておこう。
なお、最低動作環境で提示されているグラフィックボードにはIntelのArc A750などの名前も見受けられ、RX 5700やGTX 1070などのパーツも記載されているが、これはフルHD環境下でグラフィック設定を妥協した状態でプレイできる程度のセッティングであり、本作が持つリッチなグラフィック表現は十分に堪能できない点に注意。
またフルHD以上、WQHDや4KのPCモニターをネイティブ解像度で使う人は、推奨要件で提示されているグラフィックボードよりも性能が上のモデルを用意しておくと良いだろう。基本的にPCモニターの解像度が上昇するほどグラフィックボードへの負担が増していくため、マシンパワーには余裕を持っておくことも大切だ。
さらに本作をプレイした動画を高品質な映像で実況配信しようと考えている場合には、推奨要件で提示されているCPUよりも高性能なプロセッサーを用意しておくと安心。動画を実況配信するというタスクはプロセッサーの処理性能に大きく依存することになるので、自分でよく調べながら快適さを実現する環境を整えていこう。
往々にして大手パブリッシャーの最新ゲームタイトルは、PCゲーマーを一定の「ふるい」にかけていく傾向があり、これがPCパーツメーカーを潤わせることにも繋がっていく。高性能なパーツが生まれることでその性能を遺憾なく発揮できるゲームが求められ、その逆もまた然り、というわけだ。持ちつ持たれつの関係性を理解しよう。
SF映画の人気作『アバター』の世界観で冒険と戦いを楽しめるアクションアドベンチャーゲーム『Avatar: Frontiers of Pandora™ (アバター:フロンティア・オブ・パンドラ)』は、現在Steamストアで好評配信中。原作映画ファンにはマストなゲーム作品に仕上がっており、その驚異的なグラフィックに心が踊ること請け合いだ。
興味が湧いた人は今すぐSteamストアにアクセスして、詳細なゲーム情報をチェックしよう。
【おすすめポイント】アバターの世界へ出発!
総評:目新しさはないがグラフィックは圧巻
近年は3DCGの技術が飛躍的な進化を遂げ、ゲーム業界にもその波が確実に押し寄せている。筆者が最も気になっているのはNVIDIAが提唱する「AI (人工知能)」を用いたゲームの自動リマスター機能で、対応するタイトルであれば元のテクスチャーを美麗なモデルへと変換して出力させてくれるというもの。今後の動向が非常に楽しみだ。
一般的にゲームの面白さとグラフィックの美麗さは比例せず、また明確なコンセンサスも存在しない。カクカクのドット絵でも面白いゲームは面白く感じられ、目を疑うようなグラフィックを持つゲームが退屈に見えることもある。要するに「ゲームの本質が何であるか」によって、表現スタイルとアプローチは大きく変わっていくのだろう。
『Avatar: Frontiers of Pandora™ (アバター:フロンティア・オブ・パンドラ)』の原作である映画『アバター』シリーズの大きな役目は、圧倒的な視覚効果で観客たちを魅了することにある。『スター・ウォーズ』を見てトラックドライバーの職業を辞し、自らも映像の世界へと飛び込んでいったキャメロン監督らしい作風だ。
80年代にその隆盛を極めたSFX (特殊視覚効果)はまだアナログが大多数を占めていたが、観客の多くは「映像のマジック」に酔いしれ、その中で名作と後世に伝えられていくSF映画シリーズも数々誕生していった。キャメロン監督は『アバター』シリーズで再びSF映画監督としての地位を自ら復権していったと言えるかもしれない。
3DCGツールの大幅な発展によって、現在映画でSFX(VFX)を用いる場合には、99%デジタルの工程が発生し、高品質なSF映画やアニメーション映画の数々が登場してきている。各国のスタジオでその品質にバラツキが生まれていることもあったが、ここ最近はどの映画でも軒並みハイクオリティーな映像美を獲得している状況だ。
そんな状況の中でもキャメロン監督の『アバター』シリーズが群を抜いて素晴らしいのは、映像表現の醍醐味でもある「カット割り」や「ストーリーテリング」が充実しているため。単に特殊効果の良さをひけらかすだけではなく、観客が登場人物たちに感情移入できるような仕掛けの数々が施されているのだと推察できる。
筆者も映画『アバター』シリーズは全て鑑賞しているが、キャメロン監督は自分で絵コンテを切れる人物なので、頭の中にあるシーンの構築をしっかりと再現する能力に突出していると感じた。映画はストーリーありきであり、特殊効果はそれらの演出を補完していく道具に過ぎない。そんな「事実」を実感させてくれる作品でもあるのだ。
話をゲーム業界へと戻していこう。そんな『アバター』シリーズの世界観を最新鋭の3DCGモデルで再現している『Avatar: Frontiers of Pandora™ (アバター:フロンティア・オブ・パンドラ)』はどうか。グラフィック面では圧倒的な美麗さを誇り、PCの性能が優れているほど、プレイヤーはその圧巻の映像美を体験できる作品だ。
ではこのゲームの「本質」は何だろうか。映画を見ていないプレイヤーも熱狂させる世界観とシステムか?と問われると「否」であり、ゲームとして目新しいことをやっているのか?と問われればこれも「否」となる。つまり本作は「映画そっくりの映像美」を目指していた作品であり、ゲームとして大切な「何か」に欠けている、と言える。
ユーザー評価で最も辛辣だったのは、本作が『ファークライ』シリーズのシステムを使いまわしているというもので、この点について筆者も異論はない。大手ゲームのパブリッシャーは決算に間に合うようにゲームを開発していく厳密なスケジュール管理体制を敷いているので、斬新かつ画期的なゲームシステムのアイデアは生まれにくい。
思うにこの作品は、今後順次公開されていく映画『アバター』シリーズに対して世間一般的な「興味」を持続させていくための「繋ぎ」だったのではなかろうか。そしてその存在意義は、2作目となる『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』リリースから1年後という時期に決定されていたのではないだろうか。そんな考えもふと浮かぶ。
エンターテインメントの世界で「マルチメディア展開」は立派な戦略であり、かつて『マトリックス』シリーズも映画の世界観を補完する形のビデオゲームをリリースした経緯を持つ。これは監督のウォシャウスキー姉弟(当時は兄弟)が無類のゲームファンであったことも関連しているだろうが、その親和性は非常に高いと言える。
『Avatar: Frontiers of Pandora™ (アバター:フロンティア・オブ・パンドラ)』が2025年に公開予定のシリーズ3作目にどこかの部分で引っかかっていく設定を持っていればその存在価値は上昇するのだが、残念ながらキャメロン監督とユービーアイソフトはそこまでの合意に達しなかった様子で、完全なる「スピンオフ」扱いだ。
某FFシリーズも近年は壮大な技術デモのようなムービーシーンが多くなり、ゲーム本来の面白さを探求するベクトルからは外れてしまった印象を受けるが、本作もある意味で最新ゲーミングPCの性能を引き出すための技術デモ的な側面を拭いきれない。時間をかけて開発を進めたチームには申し訳ないが、これが筆者の正直な感想だ。
無論『ファークライ』シリーズのシステムをこよなく愛し、ハイテンションなバトルを進めていくプレイ要素に興奮できる人にとって、本作は優れたグラフィック品質を持つゲームとして重宝されていくだろう。ただしその一方で「個々のゲームは独立したアイデンティティーを持つべき」と考えている人には無用の長物となる可能性が高い。
アバターがシリーズ化していったように、本作も独自のストーリーテリングを持続しながらシリーズ化していけば、ある意味固有のファンを持つゲームタイトルとしての地位を固めていくかもしれないが、前述の通り「ただの繋ぎ役」に徹しているのであれば、単発リリースで徐々にフェードアウトしていく未来が待っている。
SF映画の人気作『アバター』の世界観で冒険と戦いを楽しめるアクションアドベンチャーゲーム『Avatar: Frontiers of Pandora™ (アバター:フロンティア・オブ・パンドラ)』は、現在Steamストアで好評配信中だ。
【おすすめポイント】グラフィックは必見!
アバター:フロンティア・オブ・パンドラスペック/動作環境
動作環境 | 必須環境 | 推奨環境 |
---|---|---|
対応OS | Windows 10(64bit) | Windows 10(64bit) |
CPU | Intel Core i5-4460 | Intel Core i7-8700K |
メモリー | 8GB RAM | 16GB RAM |
グラフィックカード | NVIDIA GeForce GTX 960 | NVIDIA GeForce GTX 1080 |
VRAM | 2GB | 8GB |
HDD空き容量 | 50GB | 50GB |
DirectX | DirectX 11 | DirectX 12 |
備考 | インターネット接続が必要 |
Avatar: Frontiers of Pandora TM & © 2023 20th Century Studios. Game software © 2023 Ubisoft Entertainment. All Rights Reserved.
アバター:フロンティア・オブ・パンドラの評価・レビュー・評判(0件)
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